レイニークオーツ 2

「……ちょっと待って、待って、今内容を整理するから」

 街の外れにある宿屋、忘れじの面影亭。が贔屓している15歳の双子、ライとフェアが経営している。安くて美味しいランチを出すということでも街のお得意様がいる。そこで少しばかり、事件が発生した。
 見覚えのない小柄な天使の姿に、明らかに竜の子供が3匹増えているではないか。

「ええと、名前は、リビエル、よね?」
「そうですわ」
「知識の天使……の見習い、と」
「えぇ」
「……んで、ライとフェアの後ろに居る、3匹のちっこくて可愛い竜を守護する御使い、と」

 聖王都に戻っている間に、事情がややこしくなっている。一体何があった。

ねーちゃんが聖王都に戻ってる間、色々あってさ……」
「いない間の出来事なら仕方ないわよね、うん。うーんと、多分、その後ろの子達は『至竜』かしら。鬼妖界の至竜は龍神とも言われているけれども」
「鬼妖界にも竜が居るの!?」

 声を荒げたのはフェア。そして竜の子を一発で至竜と見抜いたことに驚くのはリビエル。
 リィンバウムに竜が居るのは既知の事実だろう。しかし鬼妖界にも竜が居るとなれば――。

「いるわよ。詳しいことは調べてないからわからないけど。で、その子たちは謎の軍団に狙われている、と」
「ああ……しかもそれが厄介なことに、俺らの親父が関わってるみたいでさ……」
「だから無関係、って訳じゃなくてね……」
「あー、そりゃ更に面倒なことが起きてるわね……」

 自分の親が関わっているともなれば、彼らの性格からして放っておけないだろう。癪に障るとは思っているだろうけれど。
 それまで口を閉ざしていたミントが、事情の説明に追加する。

「だから、ライくんたちを守るっていう形で私たちも一緒に戦っているのよ」
「あー、なるほどだわ……。ってことはグラッドも?」
「そうだけど……」
「朝、会ったとき何事もなかったかのように巡回してやがった……」
に迷惑が掛からないように、って考えてたのかもしれないよ?」
「かも、しれないね。でも残念ながら、それに首を突っ込まないわけにも行かない。ライやフェアが巻き込まれてるならなおさらよ。嫌だとかダメだとか言われても私は巻き込まれるから」
「え……でも、ねーちゃんだって仕事が……」
「こと前線での戦いに関しては、ミントよりは向いてるわよ。私の本来の仕事そっちなんだもの。ミントは召喚師としては強いけど、あくまで後方支援。前線での戦闘には向いてないから」
「そうだね。帝国軍と協力して治安を守る、っていうのが召喚師としてのの仕事だから、その点に置いては頼っていいと思うよ。、本当に強いから」

 今まで召喚師として本気を出して彼らの前で戦ったことはないし、疑問視されるのは当然だ。例え、かつての戦争の中枢で戦っていた人間だとしても彼らにその話をしたことはないし、それに参加したことがあると言っていたグラッドにだって詳しい話をしたことはないのだ。
 その話はするべきではないと思っているし、やっとのことで安寧を得た彼らのつらい思い出を掘り起こすようなこともしたくない。

「でも、やっぱりねーちゃんまで巻き込むのは……」
「じゃあこうしよう、私の気が向いたら勝手に間に入る」
「えっ」
「それなら私が勝手にやることだから、いいよね?」
「……ぐ」
「あはは、これは、の粘り勝ちだね」
「いぇーい! そういうわけだから、よろしく頼むわね?」

 

→レイニークオーツ 3

2006/12/26,2012/09/22,2015/05/30