沈んでしまえ。

「…」

彼女は、気付いて居るのだろうか。
私が、彼女をずっと見つめていることを。

ここは宿。

ルークとガイは女性陣の荷物持ちに借り出され、今こうして を見ているジェイドも用事を済ませて戻ってきたばかりだった。
は1人でやることもなくベッドに腰掛けたまま読書に耽っている。

今、この場にジェイドが居ることにすら気付いていない。
そっと、気配を消して、足音を立てずに に近寄る。

「―――…
「うわぁああ!? じ、ジェイド!?」

案の定 は驚き、そのままベッドに倒れこむ形となる。

「おや、私を誘ってるんですか?」

でも、それもいい。

「んなわけなかろうに!!!」

そう叫んで起き上がろうとした の肩をぽん、と押す。
はまたベッドに倒れこむ。

「なっ、何がしたいんだあんたは…!!!」
「いえ、これは絶好のチャンスだと思いまして」

くすくすと笑いながら、 をベッドに押さえつける。

「―――今は誰も居ませんよ?」
「な、だ、だから何…」
「今この状態で、どうなると思いますか?」
「え…」

―――解剖される。
そう脳裏に過ぎった。

と思ったら は口に出していたのか、ジェイドが の額を小突く。
幾ら誰も居ないからって解剖はしませんよ、と。

「じゃぁ、何」
「鈍いですねぇ」

にっこりと笑って の首元に顔を埋める。

「―――や…っ!!!!」
「…随分と可愛らしい声を出すんですね、貴方は」

何か、新しいおもちゃを見つけたかのような。
そんな感じに、ジェイドは言った。

「次は」

こっち。
そう小さく呟いて、 に唇を重ねる。

「んん…っん…!…は…ぁん!?」

重ねていただけの唇を割ってジェイドの舌が の口内を侵す。
ようやく開放されて、肩で呼吸をしながら はジェイドに問うた。

「なん、で…」
「ここまでされて聞く必要がありますか?」

それとも、これ以上されたいんですか?
ジェイドの笑みがそう語っていた。

「…ジェイド…」
「何か?」
「大好き」

その言葉に、普段崩さない表情(かお)を一瞬ばかし紅潮させ、もう一度―――今度は優しく口付けた。

私は溺れていく。
私は沈んでいく。

貴方という、美しい泉の中に。

2006/04/01