Vintage -ヴィンテージ-

それに気付いたのは最近だ。
自分がそんなことを思っているなんて考えてもいなかった。
だから、驚きを隠せなかった。

表面上にその表情が現れていなくても。
とても、とても驚いていた。
彼女の姿を見つけると必ず目で追っていて。
気付いたら、彼女の姿はもう視界には無くて。
それの繰り返しだった。

そんなある日だった。
彼女が、書類を自分の執務室に持ってきたのは。

「大佐、これ、この間の爆発事件の書類です」

そういって彼女は書類を差し出す。
それを平然を装った顔で「有難う御座います」と返して受け取る。
これは誰が来ても同じ相変わらずの返答。
そしてもう一つの書類を彼女がジェイドに差し出す。
そのの手を、ジェイドは掴む。
そのことにが驚いていると、ジェイドは口を開く。

「…准尉」
「は、はい…?」
「…貴方は、何か大切なものはありますか?」

突然の質問に、はぱちくりと目を動かし、それから言う。

「あります」
「そうですか」

何故いきなりこんな質問をしたのだろう。
そう思って、聞き返す。
だが、ジェイドは何でもないと言う。
何でもないはずが無い。
普段こんなにも真剣な表情で彼は―――人にモノを聞くだろうか。
そう問い詰めたら、ジェイドは紡ぐ。

「…私は、大切なものがあります」

そう、一言。

「ですがそれはとてもとても貴重なもので、私が願っても手に入るようなものじゃないんです」
「形見とか何か、奪われてしまったとか…?」

の言葉に「違いますよ」といつものように笑ってみせる。

「それは人でしてね」
「あ、優秀な部下ですか!?」
「…半分当たりですが、半分は間違いですね」

の手を掴んだまま、呆れながらそう言った。

「既にその人は私の部下…管轄下にあるんですが、どうにも会う機会が少なくて」
「そう、なんですか?」
「えぇ、そうです」

彼女は、それが自分だとは、判っていない。
ジェイドは続けた。

「准尉という位まで上り詰めた女性です」

女性の准尉は以外にも何人かいる。
だが、第三師団には、一人しかいない。
その事実に気付き、がジェイドを見ると、ジェイドは満足そうな顔をしていた。

「貴方が欲しいんです」

ずっと。
ずっと前から。

貴方が欲しかった。
自分の好みに合うなんて、貴重すぎる位なその女性が。

BGM:ヴィンテージ(ポルノグラフィティ)
2006/04/20