SACRIFICE

もう、彼女の姿は見当たらない。
気付くのが遅かったのだ。

今はもう彼女はこの世には居ない。
それが、自分のせいであるということも、判っている―――。

 

「…俺が代わりにやってやる!」

その声に、ジェイドは以前同じ光景を見たことを思い出した。
彼―――ルークとは目的が違う。
けれど、『彼女』は言った。

『私が代わりにやるから』

そう言って、彼女は―――。
思い出すだけでも、胸糞悪い。

「大佐…?  大丈夫ですか、顔色が優れないみたいですけど…」
「そうですかー? 元が白いのでそう見えるだけかと」

そう笑いを取り繕ってみせる。
そんなもの、朝飯前、だ。

彼女は自分の代わりに―――犠牲に…生贄になってしまった。
自分がしっかりしていないばっかりに。
もう、今となっては遅い。
今更に彼女が好きだったのだと自覚しても。

彼女は既に死しているのだから。

「… …」

誰にも判らないように小さく、けれど強く呟く。
彼女の面影をルークに重ねながら。

ルーク。
貴方は失敗をしないで下さい。

「… …」

貴方の意思を継いでくれそうな、そんな人間が目の前に居ます。

貴方を失った痛みが今更になって蘇る。
今になって私は気付いたんですから。

貴方が、好きだった、と。

 

生贄となり、消えてしまった少女へ捧ぐ。
この想いを。

BGM:Sacrifice(ALI PROJECT)
2006/04/29