A Wish

「願望、ねぇ」

乙女の会話の中、 はつまらなそうに呟いた。

 

盛り上がりは最高潮。

盛り上がりすぎて居た堪れなかった はそっとその部屋を抜け出して、ワインセラーを覗く。
適当にワインを選んで、グラスとコルク抜きを手に椅子に座る。
机に置かれたワイン。
抜かれたコルク。
ワインの注がれたワイングラス。

正直、赤ワインの色はあまり好きじゃない。
血を思い出させるから。
かといって白ワインは味が好みじゃない。
だから赤ワインを飲むことが多い。

「夜中に一人酒ですか」
「―――…、ジェイドか」

その存在に驚くこともなく、 は的確に返すとグラスに口をつける。

「隣、失礼しますよ」
「どうぞ。あぁ、グラスはいる?」
「自分で取ってきますよ」

そういってグラスを持って戻ってきたジェイドは の隣に腰掛ける。

「その様子だと、アニスたちの話に付いていけなくて逃げてきたみたいですね」
「そういうジェイドこそどうして」
「私は寝付けなかったので」

そういってグラスに口をつける。
その姿が様になるから何かむかつく。

「年頃の乙女は恋の話題が尽きないわねぇ」

正直、話に参加しづらい。
彼女達はまだ のことを20代だろうと思っているらしいが、実際はジェイドと然程変わらない。
それを言うべきか言わぬべきか毎度こういうときに迷うのだが、抜け出すということで話に参加していない。

「何せ年頃ですから」
「若いっていいよねぇ」
「貴方はまだ若いでしょう」
「それを言うならジェイドだってそうでしょう」

たかが1歳の差なんだから。
そう が言うと、ジェイドは苦く笑う。
そして、それから は呆れたように言った。

「願望」
「願望が何か」
「最初の彼女達の話題。自分が望んでいること」
「ティアは真面目に答えそうですねぇ」
「ご想像通り。あの子は真面目に答えたわよ」

アニスが茶化し始めると途端会話は恋愛へと向いたが。

「…私に願望はあるかって、聞かれた」
「貴方にはないでしょう、もう」

もう。
そうジェイドにいわれて確かにと頷く。

もう既に失うだけ失った。
敢えて…『願望』を上げるなら、と は言う。

「ジェイドと一緒にいられればそれで良い」
「酔いましたか貴方」

普段こういうことは絶対に言わない。

「そうかもね。今なら何でもいえそうよ」
「酔ったついでに私の本音でも聞いてみますか?」
「ジェイドは酔ってないでしょう」
「さぁ、どうでしょうか?」

カタン、と椅子から立つ
その足取りは覚束ない。

立った途端ふらり、とよろける を支える。

「…大丈夫ですか」
「…有難う、ジェイド」

助かったわ。
そう言ってまた歩き出そうとする を机に押し倒す。

「…ジェイド?」
「…このまま部屋に帰すのは勿体無い」
「…は…?」
「いや…、帰したくない。それが本音ですね」

その言葉に、 は一瞬ばかし無言になった。

「…それは、私を好きだ、と。そう肯定していいのね?」
「いえ、好きではありませんよ。愛しています」

言うだろうと思った。
そう は呆れてジェイドの首に腕を回す。

「どうぞご自由に、ジェイド?」
「ではお言葉に甘えて」

そういって、ジェイドは の首元に顔を埋めた。

 

 

 

 

「…あちゃー…とんでもないところに遭遇しちゃったよー…」
「…た、大佐…そんな…何もこんなところで…」
「ど、どうしますの一体…!」
「み、見つかるとやばいからとっとと退散しよう…!」

こそこそと女3人はその光景を見ていたとか。

BGM:地獄の季節(ALI PROJECT)
2006/04/30