Sonority

「…―――また、だ…」

は立ち止まって呟いた。
この音は最近になって聞こえ始めた音。
聞きなれない、音だった。

ピオニーに聞いたところ、クラブサンという楽器だという。
他にも名前があるらしいが、ピオニーは忘れたらしい。

「…誰が弾いてるんだろ」

独特な音の楽器。
ピアノでも、ハープでもない。
寧ろ2つを混同させたような音色。

毎日暇があればその音源である場所を探すようにしている。
だが、中々見つからなくて。

「…まだ、聞こえる」

今日は、長い気がする。
ふらりふらりと音の聞こえるまま、 は足を進ませる。

「―――ここ…」

その場所。
その扉。
―――ジェイドの私室、だ。

「…つまり、弾いてるのは大佐って事か…?」

む?
と考え直してみる。
楽器、弾けたのか―――?
と。

それにしても。

「…不思議な音色…」

そっと、その扉を少しだけ開けてみる。
その部屋の持ち主であるジェイドにばれないように細心の注意を払って。

その隙間から、丁度見えた。
ピアノとは違う、けれど似ている形のその楽器を弾いているジェイドの姿。

その手付きは慣れたもので、指先が滑らかに動いていた。
―――突然、ジェイドの指が止まる。

「―――

その声に、びくり、と は肩を震わせる。

「怒りはしませんから、扉を開けて入りなさい」
「―――…はい…」

いつから、気付いていたんだろう。

「…大佐…楽器弾けるんですね…」

別に意外と言うわけじゃない。
意外だというなら医師免許を所持しているということか。

「弾けますよ」
「…綺麗な音色でした。最後までいつも聞いたことはないですけど」

そう が言うと、ジェイドは言う。

「…最後まで全て、聞きたいですか?」
「―――はい」

聞かせていただけるのなら、その音色を聞いていたい。
―――そしてその曲を弾くジェイドを、見ていたい。

弾いている姿がとても儚く美しかったから。

BGM:サボテン Sonority(ポルノグラフィティ)
2006/05/01

Sonority(ソノリティ)。
響き渡る、轟き、反響。