愛し愛され愛したい

「…―――」

いつも通りに外の掃除をする。
カーティス家にメイドとして使えている女。
彼女の名は、 という。

外の掃除をするとき、彼女は必ず時間を決める。
それが、何故か、というのは彼女にしか判っていない―――そう、自負している。

「…また、この寒い中外の掃除ですか」

その声に気付くと、 はいつも通りに言う。

「ジェイド様、お帰りなさいませ」
「毎度毎度ご苦労様です」
「いえ、お仕えしている身ですからこれぐらいのことは―――」
「他のメイドが進んでやらない仕事を、わざわざ?」
「それでも、構いません。カーティス家に仕えている身ですから何を言われても、することが何でもやります」

そうですか、と彼―――ジェイドが屋敷の中へ入っていく姿を見送り、はぅ、と溜息に近い声を出す。
だが、その続きの言葉は外気に触れる事はなかった。

彼―――ジェイドは養子としてこのカーティス家に来た。
そう聞いている。
彼は男には勿体無いほどの綺麗さを持ち、貴族のご令嬢、ご夫人から熱烈なラブコールを毎日毎日受け取っている、言わば『モテる男』、だ。
無論のことながら も彼に憧れを―――恋愛感情を抱いていた。

けれど、『仕える者』であるジェイドを好きになった、愛したところであちらからの寵愛など、もらえない。
使用人となんて、この屋敷の誰が許すのだろう。
だから、彼女は誰も進んでやらない外の掃除をいつもする。
ジェイドが帰って来たとき真っ先に会えるから。

本当なら―――愛されたい。
愛してはいる。
けれど愛されはしない。

それを判っている。
自分が貴族の令嬢だったら、振り向いてもらえたのだろうか―――。

そう考えているうち、空は暗くなってきた。

BGM:ビタースイート(ポルノグラフィティ)
2006/06/05