飛ぶための翼を持っていますか

「大佐?」

その声に、呼ばれた本人の反応はなかった。

「…寝てる…」

執務机に突っ伏すようにして大佐ことジェイド・カーティスは寝ていた。
左腕がなんとも不自然に書類を手にしたまま空中をさ迷っている。
彼がこんな風に寝ているのは珍しい。
そう思ってふと気が付く。
―――綺麗な髪だと。

そういえば彼の目は譜眼で紅かった。
その紅とブロンドの髪が彼にはよく似合うのだ。

優しく、軽く。
ジェイドの髪に触れる。
柔らかくてさらさらしてて。
なんだか羨ましい、と思った。

「…だ…」
「―――!」

声がして驚き手を離す。

「…ネビリム…せんせ…い…」

夢…。
は安堵してまたジェイドの髪を触る。

「大佐…」

秘密があるのは悪いとは言いません。

「…でも…困ったことがあるなら…誰でもいいんです…貴方の中で全て解決しようとしないで。 私も、いますから。少しは、頼りにしてくださいね?」

寝ている彼に言っても彼には聞こえてないだろう。

貴方は、縛られすぎている。
自分の過去に。

「飛び立つためのその翼…。私が、与えて差し上げますから…」

だから、何かあったら。
私に。

「… ―――…」

また寝言か。

くすり、と笑って。
どんな夢を見ているんだろう。
そう興味も沸いて。

「大佐、起きたらお仕事なさってくださいね」

もう一度、ジェイドの髪を軽く触る。
手を離して、踵を返し、扉へと手を伸ばす。
―――しかし。

目の前の、扉を押える手。
背後の気配。

「…
「ったっ大佐…!?」

さっきまで、執務机に突っ伏していなかったか?
そう疑問が過ぎる。

、こっちを向いてください」

向かないなら向かせますが。
そういうより先に、 はジェイドを向いた。

「飛び立つためのその翼を、私にくれると言いましたね?」
「た、大佐何処から聞いて…!!」
「そうですね… が『私もいますから』と言った辺りからでしょうか」
「殆ど聞いてるじゃないですか!!!」

うがーと反抗するとジェイドは笑う。

「…確かに貴方は私に翼をくれると、そういいましたね?」
「え、あ…はい…」

ジェイドの手が の髪を捕らえる。

「では、 を頂きましょうか」
「―――えぇ!?」
「…いけませんか?」
「な、なんで…」
「翼になってくれるんでしょう?」
「そ、それは言いましたけど確かに…!」
「だから、です」

だから?
何故?

「貴方が、必要だから、ですよ」
「あの…もしかしてお役に立ててないとか…?」

鈍いですね。
溜息を付きながら言う。

「―――好きです」
「ひぁあっ?!」

の耳元で囁いて。

「だから、私の傍に居てください」

そして、私の翼となってください。
飛び立つための、翼と。

2006/04/03