INNOVATION

新しいもの。
その気持ち。
新鮮で。

「うーわー…」

如何しよう。
ジェイド大佐の執務室の前で立ち止まったまま扉を叩くか叩かないか迷っている。
いや、本来なら叩かなければならないのだが。

今に越したことじゃない。
だが、それまでの間こういうことが何も無かったのだ。
だからどうってことなかった。

軍に入ったばかりのとき、書類を持って走っていた時、ジェイド大佐にぶつかった。
それが、出会いだった。

それ以来どうしてもどうしても気にかかってしまって。
気付けば目で追っていて。

これが新しく生まれた気持ち。
好き、ということで。

だから部屋に入るのを躊躇う。
ただ書類にサインを貰いに来ただけなのに。
どうしてこんなにも迷うのか。

「―――…っし! 失礼します!」

は自身の頬を叩き、ドアをノックして部屋へ入る。

「―――ってアレ?」

部屋はすっからかん。
誰も居ないのだ。

「どーすれば…」

大佐のサインが必要な書類なのだが。
放置していくわけにも行かないし。
―――となると。

(待つしか…)

そう心で呟いて溜息を発した直後、

「どうかしましたか、 ?」
「うぎゃあああ!?」

ずざざっ。
勢い良く書類を抱えたまま下がる。
それを不思議そうに見る男こそ、ジェイド大佐。

(け、気配が無かった…)

人の気配が感じられなかった…。

「あぁ、書類ですか」
「あ、はい。サインを頂こうと思いまして」

これです。
そう差し出す。
すると面倒くさそうに仕方無さそうにペンを走らせるジェイド。

「はい、終わりましたよ」
「あ、ご苦労様です」

では、失礼します。
そう言って扉を閉める―――直前。

「また今度。今度は公務以外で、ね。 ?」

そう、ジェイドの声が聞こえた。

「…っあ、名前…!!!」

彼は、自分の名を知っていた。

「…書類出してこなくちゃ」

ぶんぶんと首を振って忘れようとする。

 

また今度。
今度は公務以外で、ね。

 

「公務以外って…」

つまりは、プライベートか?
だが公務でも滅多に会わぬというのに(一方的に見てはいるが)。

「だから、書類!」

自分の頬をばしんと叩き、書類を抱えて はまた、走っていた。

2006/04/03