合鍵で開けられた部屋

「あら、帰ってきてる」

 パン屋の仕事から、シティの広場近くにある自宅マンションに戻ってきて、扉を開けて、もう一つ靴があることに驚いた。
 しばらく戻ってきていなかった、本来の仕事の相方だ。

「十代、帰ってたのね」

 ひょい、とリビングに顔をのぞかせると、そこに彼がいた。成長することもなく、と同じように緩やかな時間を生きる人物、遊城十代。
 彼もまた、人間ではない。

「ああ、、これお前んとこの? 腹減ってたから食べてるぜ。あ、おかえり」
「ただいま。うん、それ昨日のだけど残ってたの。よかった、わたしひとりじゃ食べきれなかったから。……調査、どう?」
「まだパラドックスに関することはないみたいだな。もう少し後かもしれない」
「そっか。十代が出会った遊星はいつの頃の、っていうのは分からないのよね……」

 十代は、数十年前、不動遊星に出会っている。時代を超えて、彼と出会ったのだ。デュエルモンスターズを壊滅させようとしたパラドックスを阻止するために、力を合わせて戦ったのだという。
 パラドックスの目論見は終わったとしても、仲間がいる可能性があると彼は調査を続けていた。

「それだけでも分かっていれば、いつ起こるかっていうのは分かったんだけどなあ……。でも、この世界があの遊星のいた世界と同じかどうか、というのは正直俺にもわからない」
「そりゃあそうでしょうよ。君に分かったらすごいと思うわよ」
「なんだそれ……ひどいな!」
「斎王じゃあるまいし、未来を見ることなんて出来ないでしょう、っていう意味よ。いくら君がユベルと超融合したことで人間離れした力を手に入れているとしても、ね」

 はばさり、と上着をソファに放り投げ、十代のいる机の上に、今日もらってきたパンを追加する。十代はそれをひょいと取り、食べた。

「お、これ美味いな!」
「ああそれベーコンパイ。雑賀さんっていう今、遊星くんの面倒を見てる人も気に入ってるわよ」
「気にいるのも分かるぜ! これ美味いもん!」

 嬉しそうに食べる十代を見て、の顔も自然とほころんだ。美味しそうに食べる人は、こちらまで幸せにする。不思議なパワーだ。

「そっか、よかった。あ、そういえばジャック・アトラスのことは何か分かった?」
「ああ、どうやらジャックは龍の痣っていうのを持ってるらしい。伝説ではシグナーと言われてるんだって」
「シグナー……」
「で、そのシグナーは龍を使う。ジャックはレッド・デーモンズ・ドラゴンがその龍みたいだ。多分遊星はスターダスト・ドラゴンがそうだろうから、遊星にも痣はあるはずなんだ。スターダスト・ドラゴンは前に俺とあったときに使っていたカードなんだけど、今はジャックの手にあるみたいでさ。遊星がそのカードを手にするのは、もうちょっと後みたいだ」
「なるほどね……。遊星のデッキ構成とかは、さすがに分かってないわよね……」
「前に会った遊星のなら分かるけど、今の遊星のは分からないな……」
「ふーむ……そっか。彼のデュエルはまだ見たことないしなあ……。あ、十代、いつまでここにいる予定? またすぐに出かける?」
「いや、しばらく情報整理するからここにいるよ。久しぶりに……、といたいし、さ」
「あら、かわいいこと言うじゃない」
、段々おばさんくさくなって……いや、なんでもない」
「……否定はしないわよ。歳だわやっぱり。でも、ここにいてくれてありがとう、わたし寂しかったのよ、十代に逢えなくて」
「俺だって。またしばらくしたら調査で出てっちゃうけど、それまでは一緒にいるから、寂しくなんかさせないぜ」
「うん、そうね。ありがとう、十代」

みらいいろ
2012/03/19