brain change

「……やな予感だぜ」
「……わたしも思う」

 パソコンの画面を凝視しながらパンに手を伸ばし、食べる。それを何度かしていたときに、対面して同じことをしていた十代が言葉を口にした。

「これにはパラドックスは関わっていないみたいだから、遊星はこの事件のあとにまた何かに巻き込まれたんだろうな……」
「あんたといい不動遊星といい、なんというか不幸体質よね」
「そうかあ?」

 パンを食べながら頬杖。よくわかっていない、という感じである。はあ、とわたしは短くため息をついて、昨日の出来事を整理するために喋ることにした。

「昨日、アルカディアムーブメントを中心として、二つの絵が浮かんだわよね」
「ああ、どうやらナスカの地上絵そのものらしいな。ハチドリとトカゲ」
「地上絵が消える事件が起きてるんだっけ」
「ああ。今回の事件に関係大有り! 昨日の絵が現れた後、巨大なモンスターが現れ、人の魂が吸い込まれていった……。数百人が行方不明のままなんだと」
「……そうなの」
も気を付けろよ。人以外の魂が吸い込まれないっていう保証はねえからな」
「うん……。十代もね」
「俺は大丈夫だって!」
「その根拠のない自信はどこから湧きでてくるのよ、もう……。あんたのデッキとの絆が、とても強いものだっていうことも、ユベルがいるってことも知ってるけど、あんただって吸い込まれる可能性があるのよ?」

 呆れながらきつく、注意するようにいう。注意をしたところで、彼はまた無茶をするのだろうけど。

 何度目かのため息を吐き出そうとして、ピンポーン、と呼び鈴。家に来るような人はいただろうか……と考えて、「さん、すまない、いるか?」と声がして、誰か把握する。不動遊星だ。

 声を聞いて、十代も誰が来たのか分かったようで、すっと目を細めて声を潜める。

「……、お前遊星に家教えてたの?」
「え、あ、うん。何かあったらここに住んでるからおいでとは、言ったけど……?」
「……、ったく、お前ホント……」
「なによ」
「俺が今はいるからいいものの、あいつだって男だぞ。お前女だぞ、ひとつ屋根の下に男女が……」
「……くっだらないなあ。いや、そういうことを良く考えられる脳になったわね、褒めてあげるわ十代。っていうか良くないわよ、あんたがこの時代でも生きてる、もし遊星があんたのことを知っていたら……」

 はあ、とため息を小さく吐き出して、出るべきかどうか迷っていると、足音が遠ざかっていった。どうやらいないと判断したようだ。
 居留守をしてしまって、遊星には申し訳ない。もし家に来たという話題を出されたら、外に出ていたと答えよう。

「くだらないってお前なあ!」
「あのデュエル脳だったあんたが、男だの女だのの話ができるようになったのねーほー」
「そりゃあ、俺だって、それくらいは……考えることだってあるし」
「ふうん?」
「あ、のなあ、俺は、お前が心配で……!」
「じゃあ、調査から早く戻ってくるとかしてくれると嬉しいんですけどねえ?」
「ぐ……」
「……、遊星くん格好いいわよねえ。無愛想に見えてとっても義理堅かったり、仲間を大切にしたり、なんでも颯爽とやってのけちゃうし、機械にものすごく強いし。Dホイール自作しちゃうとかすごいわよねえ、さすがとしか言えないわよね、あの不動博士の息子さんで、あれだけの能力があれば、プロデュエリストにもなれるでしょうし、機械関係の仕事もすぐに見つかるでしょうし、将来超安泰よねー」
「ああああもう!わかった!わかったよ! 今度から早く帰ってくる!帰ってくるから、遊星はやめろ! デュエルはともかく、マジでそういうの勝てる気しないから!」

 必死な形相をする十代に、くすくすと笑ってしまう。十代は罰が悪そうな顔をしている。
 デュエルでは勝つと明言してはいないものの、勝てる可能性はあると言っているのが十代らしい、とおもう。それ以外では敵わないというのも、自覚はしているようだ。

「……早く、帰ってきてね。寂しいんだから」
「……ああ、早く帰ってくるようにする。しばらくは一緒にいるし……」
「ふふ、ありがとう」

みらいいろ
2012/04/16