ブレイクタイム

「…………」

 どうして、わたしは、カイトに押し倒されているんだろう。
 確か、ソファに座って電子書類を読んでいたはずなのだけど……。

「……
「う、うん、なに、どうしたのカイト」
「お前が悪い」
「えっ、ちょ、ちょっと!? なに、どういうこ……わっ!?」

 カイトの顔が近づいて、どきっとする。ああ綺麗な顔をしているなあ、肌が白いなあなんて思ったのもつかの間、目を隠されて、眼前が真っ暗になった。
 目を隠しているカイトの腕を掴んで、力づくで引き離そうとしてみるが、男であるカイトに、女であるわたしが敵うはずもなかった。
 どうしたの、と聞こうと口を開こうとした直後、首元にざらっとした生ぬるいものが這った。それにびっくりして問うこともできず、ただ驚いた声だけが出る。次の言葉を紡ぐ間もなく、弧を描いている形の物で挟まれたような感覚がする。もしかして、これは。

「ちょ、ちょっとカイト、いま噛んだでしょ!? 舐めたでしょ!?」
「……それがどうした」
「どうしたじゃないわよ!? カイトこそどうしたの、よ……っ!?」

 ちゅ、とわざとらしく音を立てて首元に吸いつく。痣を残してくれるなよと思うが、彼のことだ、きっとわざと残るようにする。

「どうしたも何も、お前がかまってくれないからだろう。時間がとれたからと連絡をしてみれば出ないし、来てみれば寝ているし」
「は……、えっ、わたし寝てたの……」
「鍵もかけずにな。いくらセキュリティがしっかりしているとはいえ、その格好で寝ているなんて、襲ってくれとでも言っているものだぞ」

 その格好、と言われて自分の格好を思い出してみる。Vネックに短パンの部屋着だが、別におかしいところはない。

「別におかしくはないでしょう……部屋着なんだし」
「その状態で服がめくれていてもか」
「……めくれてたんですね。寝込みを襲うとかこのむっつりめ。それはともかく手をどけてちょうだい」
「嫌だ、と言ったら?」
「このまま拳を突き出せば、きっとカイトのお腹に一発入るわよね?」
「……わかったわかった、手を離すからその拳を解け」

 そうカイトが言うとすぐに目の前が明るくなった。急に明るくなって顔をしかめる。なにせ、カイトの向こうに天井の光があるから、光のダイレクトアタックで痛いのだ。

「ごめんね、ここのところ情報集めで奔走してて、今日やっと休みになったから……、きっと疲れがでちゃったんだと思う。カイトも休み?」
「休みというほどではないが……いや、休みかな」
「どっちよ」
「やることは終わっているんだ。前みたいに急いでいる用事が常にあるわけじゃない」
「そっか、それはよかった……」
「だから、キスのひとつくらいくれてもいいと思うんだがな?」
「そこでどうしてそう繋がるのよ……。やっと時間があいたんだものね、してあげてもいいわよ」

 素直に甘えてくるなんて珍しいこともあるものね。

2013/01/04
こいびとどうしのおたわむれ