The ally of justice (1/2)

「なあなあ、、聞いたか? 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)を使う幽霊が出るんだってよ!」

 いつものようにガレージにパンを配達に来て、クロウに言われた言葉にわたしは酷く驚いた。
 青眼の白龍。それは、かつてこの場所が「童実野町」だった頃の話で、今なおこのネオ童実野シティの中心部にそびえ立つ海馬コーポレーションを、軍事産業からゲーム産業へ変えた、海馬瀬人という一人のデュエリストを象徴するカードだった。

「ブルーアイズだと!? それはあの海馬瀬人が使っていたという、あのブルーアイズか!?」

 ブルーアイズと聞いて、ジャックが反応しないわけがなかった。わたしが驚いている以上に、彼は驚いていたようだった。

「おう、まあ噂なんだけど……。見たっていうやつがいるんだよ。ブルーアイズと、その使い手……」
「その使い手……? 誰なんだ? 海馬瀬人が使っていたブルーアイズは世界で4枚しか存在しないものだろう。うち3枚は海馬瀬人が持っていたことで有名だ。現在は海馬コーポレーションで保管されているし……。もう1枚の行方は知れず……。その最後の1枚か?」
「かもしんねえな、と言いたいところなんだが、この噂のミソは、使い手の風貌が、記録されている海馬瀬人に酷似している、ってことなんだよ」
「……! なんだと!?」
「それは、気になるな。俺も、龍亞からその噂を聞いていたんだ。もしそれがゴーストだったら……」
「……、心配だな。俺たちで調べようぜ」

 海馬瀬人に似た風貌。ただ真似をしただけだろう、とわたしは決めつけてその噂をしばらく忘れていた。

 数日後、噂を確かめに行くんだが、と遊星に誘われ、ブルーアイズの使い手が現れると噂のあるダイモンエリアの奥まった場所に、遊星、アキ、ジャック、クロウ、龍亞、龍可とわたしの7人でいくことになった。
 わたしはクロウのDホイール、ブラックバードに乗せてもらう。遊星たちが乗るDホイールや、龍亞、龍可が使っているDボードなんてものはもっていないから、仕方がない。

「……それっぽい人とかはいねえなあ……」
「ただの噂であればいいんだが……」

 そのとき、きらっ、と何かが光った。遊星のDホイールのモニタに捕捉されたその光は、まっすぐとこちらへ向かってくる……!

「避けろ、遊星!」

 張り上げられたジャックの声。遊星はその光を避けたが、わたしはその光に見覚えがあった。
 半世紀近く前の話だ。バトルシティという、海馬コーポレーション主催のデュエルイベント……。そこで、最終決戦で、見た。それ以外にも、たくさん。その光を発していたのは、海馬瀬人が使っていた、青眼の白龍。

 ぶわっ、と強い風が舞い、上空をドラゴンが通過していく。

「あれは……、ブルーアイズ……!」
「えっ、本物!? すげぇええ!あれがブルーアイズ……!」
「ちょっと龍亞、喜んでる場合じゃないわよ! あれが本当なら、デュエリストが近くにいるってことなんだから気をつけてよね!」

「……ブルーアイズ……、ホワイト、ドラゴン……」

 本物だ。では彼がいるということなのか? 本当に、彼が……? 20年前に死んだ彼が、生きているとでも……?

 空を舞っていたブルーアイズはぴたり、と動きを止めた。そしてその下に、長身の男性らしき姿があった。

「あれが、ブルーアイズの使い手か……!?」

 Dホイールの速度を上げ、その影に近づく。次第に近くなり輪郭がはっきりしてくると、飛び込んできた光景に、わたしは目を見張った。
 ありえない。ありえるはずがない。栗色の髪に、青の目。広く広がる長く、白いコート。それは、まさしくも。

「……海馬、瀬人」

 海馬瀬人そのものの姿。若い。恐らく20代の頃の姿だ。どうして彼がここに……?
 停止したブラックバードから降りる。信じられない、死んだはずの彼が目の前にいるだなんて……。

「待ちわびたぞ、
「…………瀬人!! あんたどうして……!」

 聞こうとして、息を飲む。彼がまとうオーラが、人間のものではなかった。これと同じ気配を知っている。常日頃自分と一緒にいる、精霊たちと同じ気配。

 つまり、彼は人間ではなく、精霊。
 海馬瀬人が精霊になるような理由は、分からない。そもそも、人が精霊になることができるのかということ自体が、分からないことなのだ。
 そこでわたしはひとつのカードを思い出した。

(確か、瀬人をモデルにしたカードがひとつ、あった……! ペガサスが作った、ほぼ瀬人専用のあのカード……! もしかして、彼はその精霊として宿ったというの……!?)

「それはこちらが聞きたいな。非科学的なことは信じていないのだが、お前ならば俺がこうなったことも分かっているだろう。遊城十代かお前が俺を嗅ぎつけるだろうと踏んでの行動だ。外れなかったな」

 確かに、十代とわたしはそういった異常現象的なものを調べることを仕事としている。暴れれば、どちらかが気づくだろうと考えて、暴れたというのか……。

「そのデッキはなに? そこにブルーアイズがいるってことは、もちろんそれは、あなたのデッキよね?」
「そのようだ。遊城十代の活躍があった頃の俺のデッキだな」
「なるほど。瀬人、あなたが亡くなったのは今から約20年前よ。死んでいるっていう認識は……」

 あるの?とわたしが聞こうとしたのを、ジャックが「待て!」の一言で遮った。そういえば彼らも一緒に来ていたのだった。

「どういうことか説明しろ!」
「……『正義の味方 カイバーマン』というカードがあることは知っているかしら? そのカードを作ったのはペガサス・J・クロフォード。このカードは、ほぼ海馬瀬人専用といってもいいカードよ。このカードは、カードをリリースして、手札から『青眼の白龍』1体を特殊召喚するもの。恐らく今、瀬人の手にあるはず……」

 ちら、と瀬人を見ると、彼がデッキの中からそのカードをこちらに向けていた。その絵に、遊星たちは声を失うほど驚いていた。それもそのはずだ。その絵は、海馬瀬人そのものともいえるのだから。

「……そう、そのカード。描かれているのは、当時海馬ランドで行っていたヒーローショーのカイバーマンというキャラクター。もちろん、キャラクターのモデルは海馬瀬人。モデルとなった彼自身が、このカードの精霊になったのよ」
「なるほど、精霊が実体化しているということか……! 一度死んだ人間が、精霊として蘇る……そんなこともあるんだな……」
「ええ、そうね。瀬人が自身で証明してしまったわ」
「ふん、つまり俺は人間ではないということか」

「って、ちょっと待って! なぜ、は……そんなことを、海馬瀬人を、知っているの……?」

 アキの言葉に、この場が固まる。
 この場でそれを知っているのは精霊となった瀬人と、わたしだけ。わたしが精霊と人間のハーフであるというのは、今生きている中では、十代以外はだれも知らないこと。

「海馬瀬人は、20年前には亡くなっているわ。亡くなった年齢は60歳ちょっとだったはずよ。いくらが若くみえているとしても、若い頃の海馬瀬人とどうして知り合いなの……?」
「そ、そうだぜ。って俺らより少し上……か同じくらいだろ? 今まで聞いたことはなかったが……」

 慌てながら聞く彼らに、瀬人はわたしを見ながら至極呆れた、という顔をする。
 言う機会もなければ、必要もなかったから言っていなかっただけだ。

「なんだ、話していなかったのか」
「……だって面倒じゃない。あなたと遊戯には知られてしまったから話すしかなかったけれど……。ねえみんな、驚かないで聞いてちょうだい。わたし、人間じゃないの」

 

The ally of justice 2/2

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2012/03/15