The ally of justice (2/2)

「わたし、人間じゃないの」
「どういう、ことだ……?」
「龍可は、気づいていたと思うけど」

 わたしがそういうと、一斉に視線が龍可を向いた。

「わたし、に会った時から不思議な感じだったの。精霊たちと同じ感じがしていて、は本当は精霊が実体化した存在なんじゃないか、って思っていたんだけど……」
「精霊が、実体化……? 海馬瀬人のようにか……?」
「それはちょっと違うかな。龍可の推測が全て間違っているわけではないけど、わたしは精霊じゃないよ。精霊の力は持っているけどね」
「精霊の力を、持っているだと……?」

 ジャックの目が見開かれる。信じられない、とでもいうようだ。
 精霊の力を持つ人間なんて、そうそういるものじゃない。精霊を見ることができる人は何人かいても、だ。

「……、わたし、精霊と人間の混血なのよ」

 その場がどよめく。人間でもなければ、精霊でもない。その二つの血を引く存在なんて、そういるもんじゃないから仕方がない、とはおもう。驚くのが当然だ。

「混血……。だから、精霊のように見えたのね」
「じゃ、じゃあもしかして、ねーちゃんはかなりの年齢、だったりするの……?」
「龍亞!女の人に年齢を聞いちゃだめでしょ!」
「いいのよ、聞かれても答えられないし」
「……え?」
「自分の年齢、覚えてないの」

 え?とその場全員の顔が、なぜだと問いかけてくるようだった。覚えようとも思わなかったのだ。いくつまで生きるかなんて、数えているのもばかばかしかったから。

「で、瀬人をどうするか、なんだけど。ここから動けないとかじゃないわよね?」
「動けんぞ。だからこそここで暴れていたんだが」
「カイバーマンの精霊そのものだっていうなら、カイバーマンのカードがあればいいのよね……誰か持ってる? ……わけない……」

 わよね、とため息を吐き出そうとしていたわたしの言葉を、遊星が遮った。

「待ってくれ、確か拾ったカードの中にあったはずだ」
「え……? 瀬人の持ってる1枚だけじゃないの……?」

 青眼の白龍がないデッキに、そのカードがあっても意味はない。だからこそ、瀬人専用であると言ったのだ。
 その瀬人専用のカードが、彼の持つ以外に存在する……?

「デッキに入れるのは俺ぐらいだろうが、海馬ランドの入場特典で配っていたことがある。恐らくそれだろう。だいぶ古いだろうがな」
「あの使い道のないカードなのに……ああ、使い道がないからこそ、記念カード、ね……」

 はああ、っとわたしは大きなため息を零す。そのため息に重なるようにして、遊星が口を開いた。

「そのカードがあれば、海馬瀬人をここから移動できる……んだな?」
「ええ、恐らくは。悪いけど遊星、持ってきてもらえないかしら」
「分かった、すぐ取ってくる!」

 言うやいなや、遊星は自身のDホイールにまたがり、エンジンを回す。すぐに彼の姿は遠くなった。

「このカードに移れれば、そのまま移動できたんでしょうけど……」

 わたしと瀬人以外が喋ることなく、沈黙が続いている場。それがどれくらい続いたのか分からない頃、その場に、遊星が戻ってきた。

、これだ」
「わ、ちょっと古い感じね……仕方ないか。瀬人ー!このカードに宿りなさい!」

 ば、とカードを瀬人に向けると、瀬人はふっと微笑んで、カードに吸い込まれていった。実体化していた瀬人の姿が消え、遊星たちの安堵の溜息が聞こえた……のだが、すぐ隣に気配を感じてみると、そこには瀬人の姿があった。それに遊星たちが驚いているということから、彼らにも見えるのだろう。
 龍に選ばれた彼らなのだから、見えても不思議なことではない。ただひとり、龍亞だけがなになに?と聞いていることから、彼には見えないのだろう。

「……簡単なものだな」
「わたしがやるからよ。生身の人間にはそんなことできない」
「そうか。……、このカードはお前が持っていろ」
「えっ!? だってこれ遊星のカード……」
「そんなものは知らん。このカードを持っている意味があるのは、俺以外にはお前くらいだろうしな」
「どういう、意味だよ……?」

 クロウの言葉に、ああもう、とわたしは首を振り頭をかかえる。瀬人から預かっている最後の1枚を持っているだなんて、誰にも言っていないのに。

「混乱が起きるのが面倒だから、わたし使ってないのよ? 使ったらすぐ噂になっちゃうだろうし……」
「使うときに入れればいいだろう、お前のブルーアイズのためにな。それに、俺自身がそのカードに宿っているというのであれば、お前が持っている方が都合がいい。こんな蟹頭の男の手持ちになるなど御免だ」
「ちょ、ちょっと待てよ! の……ブルーアイズ!?」
「お前、ブルーアイズを持っているのか!? もしや、最後の1枚をお前が……!?」

 これだから面倒だというのに。

「……そうよ、わたしは瀬人から4枚目のブルーアイズを預っているの。一部では瀬人が破ったなんて噂もあるけどね……」
「こいつに預けておけば、もし木馬が老いて死んだとしても行方不明のまま誰も見つけられないだろうからな。遊城十代に預けても良かったとは思うが、あいつは少々いけ好かない」
「それは十代が遊戯に似てるからでしょう。相変わらずね、瀬人は」

 くすくす、とわたしが笑うと、瀬人はむっと眉をひそめる。ギリギリのところで、彼はいつも遊戯に勝てないのだ。遊戯のあのカードの引きの良さは、わたしでもびっくりする。

 そんなわたしたちを見ていて、龍亞がおずおずと喋った。

「ええと、話ぶった切ってごめんね。っていうかみんなもしかして海馬社長見えてるの? 俺見えないんだけど……。で、ねーちゃんって、海馬社長とどんな関係なの……? 名前を呼び捨ててたし、仲が良さそうに話をしていたから、友達か何か……?」
「友達……、友達?」
「あれ、すごい怪訝そうに答えてるってことは、違うの?」
「そういう線引きをしたことがなかったような……。遊戯とは友達っていうか、なんだろう、近所のおねえさんって感じだったし……。ねえ海馬社長、わたしのことなんだと思ってる?」

 わたしが瀬人に問うと、龍亞は「やっぱり俺には見えてないんだ……」と言った。確か、彼は龍に選ばれたわけではなかったはずだ。だから、見ることが出来ないのだろう。

「ふん、そんなもの自分で考えろ」
「分からないから聞いてるんでしょうが! 海馬コーポレーションの社員だったときもあるから、部下的な感じかもしれないけど、かといってわたし秘書とかではなかったし……。木馬くんの代わり、だったときもあったわね……そう言うのを考えると、副社長代理?」

 わたしの言葉に、遊星たちが驚いた顔をしている。
 そりゃあそうだろう。海馬コーポレーションの社員、しかも「副社長代理?」だなんていいだすのだから、普通なら訳が分からなくなるはずだ。

「まあそれでも間違ってはいないな。……お前は、家族のようなものだ。お前としゃべっていると、俺は自分がKCの社長であるということを忘れられたからな……」
「えっ、そうだったの!? うわあ嬉しい! なんでそういう事言ってくれなかったのよこの照れ屋さん!」
「……き、聞かれていないから、答えなどしなかっただけだ!」
「家族……。海馬社長は所帯持ちではないと聞いていたが……?」

 遊星の言葉に、その場が固まった。というか、瀬人が固まった。

「……、ええと、遊星。勘違いしてるみたいだけど、誰も瀬人と結婚したとはいってないわよ……? それだったら、どこかしらに記録として残っているでしょうし……。あ、ええとこのカード、遊星のものだけど瀬人はわたしが持っていろっていうの、どうしよう……?」
「だ、誰がこんなじゃじゃ馬と!」
「ああ!? なにいってんのよこのブルーアイズオタク! 今のあんたなんてこのカード破れば死ぬんだからね!?」
「ぐっ……! おのれ、卑怯な手を……!」
「す、すまない、家族と言ったから、そういうものかと……。ああ、そうか、マーサハウスで育った俺達と、同じようなものか」
「うん、そんな感じだと思うわ。あ、でこのカードなんだけど……」
「ああ、が持っていて構わない。俺が持っていてもそのカードを使うことは出来ないから」
「そう? ありがとう。……良かったわね、瀬人。わたしとしては遊星に預けっぱなしでも良かったんだけど。じゃじゃ馬だなんて言うんだから、本当はわたしのこと嫌いなんじゃないかって思うしー。家族だなんていってくれて嬉しかったのにー」
「そ、それは言葉のあやというやつだ! 俺はあんなやつの手持ちになどなりたくはない! お前のほうがマシだ!」
「ほう、つまりわたしは妥協策ということですか社長。それなら、ここにこのカードを置いていくという選択肢もあるわけで……」
「馬鹿者! 俺はお前にそのカードを持っていろといったんだ! 置いていくなど許さん!」
「えーどうしよっかなー」

の、生前の海馬瀬人との力関係が見えたような気がするよ……」

 クロウの声に、遊星もジャックも笑みをこぼした。

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2012/03/19