陽気なスカラ

「はあ? ……先生、が休みだあ?」
「そうなんだよ! 今まででもたまーに休むってことはあったんだけど、理由は教えてくれなくってさあ……」
「そりゃ休むってくらいなんだから体調不良とか……女なんだし、そういうのだってあるだろ……」
「女なんだし……??? 女だから休むのか? 小鳥は休まないぜ? シャークは何か知ってるのか?」
「……、お前には関係ない」

 さらっと「女なんだし」と言ってしまったことを後悔した。遊馬は、分からないことはとことん聞いてくるやつだった……。

 こいつは確か姉がいるんだったか。遊馬の姉は、毎月決まって体調が悪くなるなんてことはないんだろうな。
 璃緒は毎月じゃないが、たまに貧血を起こす。両親が家にいないことがほとんどだから、俺が面倒を見ていたせいでそういうのを知ってるだけだ。

 だから、多分そういうのだろう、と俺は決めつけた。
 ……のだが、授業をさぼって街を歩いていたら、休んでいたはずのあいつに出くわした。

「……おい」
「あら、神代くん。今日は堂々とサボってるのね?」
「あんただって……今日休みだろ。遊馬から聞いた」
「ええ、先生業はおやすみ。今日は研究業よ」

 今日は、ってなんだ今日は、って。体調悪いわけじゃないってことか。

「……その割には研究してるようにはみえねえんだけど」
「これからケーキの買出しよ。休憩中、ってところね」
「あいつが……遊馬が言ってたけど、あんた結構休んでるそうだな。先生業とやらを」
「ええ……本業は研究者だから。元々、フェイカーに言われて九十九くんの監視をするために先生として潜り込んでいたのよ。今は違うけど。これでも私フェイカーの直属に当たるから、先生たちよりほんとは偉いのよ?」
「……そうかよ」
「あ、ねえ、神代くんはケーキ好き?」
「は? ケーキ?」
「うん。せっかくだしお茶しましょう?」
「……は?」
「ね、いいでしょ? だめ?」
「……あんた、仮にも自分の学校の生徒にサボりを助長させてるぞ」
「今日の私は先生じゃないもの。研究者のよ」
「そうかよ……屁理屈だな。いいぜ。別にケーキ、嫌いじゃねえし」
「ほんと!? よかった、甘いもの苦手かなあって思ってたの。オススメのケーキ屋があるの、こっちよ! はやくはやく!」
「はいはい」

 あんまりにも楽しそうな顔をするもんだから、俺は断れないままの後をついていった。
 惚れた弱みってやつかもしれない。

2012/11/14