観測者 (2/2)

 塔の中に入ると、カイトがいた。はいないようだ。

は……?」
「ハルトのところにいる。しかし、お前に調査のことを話していたとは驚いたぞ。遊馬には言っていないといいんだが……」
「さすがにあいつには言わないだろ……」

 エレベーターに乗り、その部屋とやらに向かう。その途中で、がいた。

「あら、いらっしゃい、神代くん。フェイカーさまが来たから部屋に戻ろうと思ったところだったのよ、ちょうど良かったわね。さ、わたしの部屋にいきましょ」
「……、別にお前の部屋じゃなくても……」

 あれか、自分の彼女の部屋には他の男を入れたくないとかいうやつか。

「うーん……ほら、ちょっと、説明に必要なものが……ね」
「……、説明、するのか」
「きっと……、神代くんは聡明だから、いろんな疑問点に気づいてしまうでしょうしね。いきましょ」

 の後を付いていくように向かい、その部屋につく。璃緒のような女らしい部屋を想像していたのだが、それはと真逆、無機質な部屋だった。
 至る所にコンピュータがある。仕事部屋……ということなのだろうか……。コンピュータの青い光を背にしたからは、威圧感を感じた。

「気づいていないものだと思っていたんだけど、いつかは疑問に思うのだろうと考えていたから、それがちょっと、予定より早くなっただけね。カイトは知っているし、退席しててもいいわよ?」
「父さんの事に関しては、俺から言う方がいいだろう」
「それもそうね。じゃあ、おはなししましょうか。わたしがいま調査しているのはね、精霊のエネルギーなの」
「精霊の……エネルギー?」
「俺たちが使役しているこのカードの一部には、精霊が実在するものがあるんだそうだ。伝説のデュエリストが使役していたものには特に多くあったそうだがな」
「へえ。アストラルみたいなもんか」
「そうね、九十九くんと一緒にいるアストラルもそういう存在にはいるわ。そういった存在は人間とは違う、特別なエネルギーを持っているの。今、フェイカーさまやカイトが使っているエネルギー感知システムはわたしが知識を提供したから出来ていることなの」
が来るまではうっすらとしか感知できなかったのだが、の知識の提供で飛躍的に精度が上がったんだ」
「わたしの後ろにあるのが、その装置のひとつよ」

 研究者が本業とは聞いていたが、そんなシステムを創り上げることに関わっているとは驚いた。カイトはこのシステムを使って、その場に駆けつけていたということか。
 だからこそ、カイトとはだいぶ前からの知り合い、なんだな。

「その精度は確かに上がったけれど、精霊と言っても色々な波長を持っているわ。だから、新たな力が発見されると、その解析をする仕事をしているの。前はアストラル世界の……ナンバーズの位置特定、今はバリアン世界のことね。それを仕事としていて、神代くん、あなたの妹、璃緒ちゃんの存在を知ったのよ」
「璃緒の……? 別にあいつは何も……」
「わたしに近い力を持ってる、ってことね。特にバリアンに関して」

 確かに、あいつは時折、何かを感じ取ることがある。それがバリアンに関することに特化している、というのか。
 ……近い、力? も何かを感じ取る力があるというのか?

「これで、どうして璃緒ちゃんの事を知っていたのか、理解できた?」
「ああ……その力が、璃緒にも、にもあるってことだな。は璃緒よりもランクが上ってとこか」
「どうかしら……わたしは精霊には特に強いけれど、アストラル世界、バリアン世界についてはあまり詳しくないの。璃緒ちゃんのほうが強いかもしれないわね。普通の人とはちょっと違うから、そういう力を求めているところには捕捉されているかもしれないから、気をつけてね」
「ああ……」
「父さんや俺、もエネルギー反応については常に見張っているが、お前の方でも何か起きれば教えてほしい。突発的に起こるものが多いから未然に防ぐことはどうしても難しいが、発生からの対応は早くできる」
「わかった、連絡はカイトにすればいいか」
「そうだな……。よろしく頼む」
「あ、わたしの連絡先も教えておくわね」

 のその言葉に一瞬、カイトがむっとした。が、すぐになんでもないように装う。の反応は特になかったということは、カイトは俺と同じなのかもしれない。

 の連絡先を予期せずに手に入れてしまったが、きっと俺から連絡をすることは、ほとんど出来ないんだろうな、って思う。用事もなく連絡をするような間柄には、まだまだ遠い。

2013/01/04
ただの状況説明