ベジタブルアイス

 璃緒との喧嘩で好き嫌いを暴露されてしまったという凌牙が、はあ、と頬杖をつきつつ、アイスティのグラスに刺さっているストローで中をかき混ぜながらため息。
 中学生らしからぬ哀愁を漂わせる彼のそんな姿を目の前にしながら、バニラアイスをつついて苦笑しているのがわたし。

 仕事の休みだからと璃緒と凌牙と一緒にショッピングモールに来ている。璃緒はさっき、目についた服飾店に入っていったのだが、わたしはちょっと疲れてしまって近くにあったカフェに入ると璃緒に告げると、凌牙も休憩したいと言うので一緒に入ることになった。
 そこで、好き嫌いを暴露されたという話が凌牙の口からこぼれたのだった。

「やっぱりまだ苦手なのね。ピーマンとたまねぎ」
「笑うなよ、
「ごめんごめん、でも苦手なのわかるわよ、凌牙って結構繊細だし……味に敏感、っていうのかしらね。ほら、どっちも甘味と苦味……たまねぎは辛味もあるわね。それが同居してるじゃない?」
「……そうだな」
「それがなんとも言えなくイヤなのよね。その気持ちすごくよくわかるわ。わたしも昔は食べれなかったし……」

 はう、と短くため息をつくと、凌牙が目を丸くして暫く動きを止めた。そんなに、苦手なものがあったことに驚かれても。誰にだって苦手なもののひとつやふたつあるでしょうよ。

「は……、意外だな。お前にも苦手なもんあったのかよ」
「あるわよ。年取ったって苦手よ。お酒もいろいろ飲んでみたけど、ビールはどうしても美味しいとは思えないし……多分これはわたしが苦味に弱い、んだと思うんだけど」
「へー、ビールって苦いのな」
「そうよ、苦いわよ。ってああそうか、凌牙はまだ中学生だった……お酒で喩え話はこの場では向いてないわね」

 中学生相手にこの話はとてもよろしくない。数年もすれば彼も成人して、付き合いなどで飲むことになるとは思うけれど。

 さくり、とバニラアイスにスプーンをさして、ふと、先日の飲み会で話題になったことを思い出す。アイス……それも、野菜のアイスが最近人気を集めているという話だ。特に、野菜を嫌がる子供に効果的だということで、雑誌で特集が組まれていたのを同僚から見せてもらった。
 たしか、その特集の見出しは――。

「『ベジタブルアイスで好き嫌いを克服させよう!』」
「……なんだそれ」
「同僚に見せてもらった雑誌にあった特集の見出し」
「ベジタブル……野菜のアイス?」
「うん。子供の好き嫌い克服に効果的で、最近人気を集めているそうよ。せっかくだし、あとでちょっとスーパー寄ってみましょうよ。個人的にも気になってるし、たまねぎかピーマンのあったら食べてみてよ、せっかくだしさ」
「えー……」
「そんな嫌そうな顔しないでよ……。アイスっていうくらいなんだから甘味があるでしょうし……ピーマンはなさそうね。たまねぎならありそう」
「……自分では買わねえぞ」
「いいわよ、わたしが買うし、食べさせてあげるわよォ」
「声が笑ってるけど顔が笑ってねえ……」

 ぷい、とそっぽを向かれる。そんなに顔が笑ってなかったかしら。ごめんごめん、と凌牙に謝りながら残りのアイスを平らげると、ちょうど買い物を終えた璃緒が姿を現した。
 そんな璃緒にベジタブルアイスの話をしたら、とても気になるとのことですぐに買いに行く事になったのだった――。

2013/05/07

かぼちゃとかはあるけどたまねぎのベジタブルアイスはみたことないなあと思いながらも題材に。お店のメニューとしては出るところがあるようですが。
野菜嫌いでアイス大好きな友人がおりまして、今年の誕生日にはベジタブルアイスを送り付けます。気になる方は探してみてください。

未だにピーマンとかパプリカとか苦手な有原です。2つの味が同居してる系の食べ物はどうにも苦手。
酸味には強いんですけど苦味には弱いです。食生活っておそろしや。