Would like to know more.

 ダークシグナーとの戦いが終わって、シティにあるゾラのガレージを借りて過ごす日々。
 俺やジャック、クロウの3人はワールド・ライディングデュエル・グランプリ――通称WRGPに向けて、Dホイールの調整や開発をしている。

 ゾラのガレージに移ってから、さんには会っていない。ダークシグナーと戦っている間にも、彼女に会うことはなかった。彼女が巻き込まれずに済んでよかった、とは思っているが。

「ゆーせーくーん!」

 ガレージの扉を開けた人物に、俺は目を見張った。

さん……!?」
「噂は聞いてるわよー! フォーチュンカップのあと、しばらく不気味な事件が続いたみたいだったけど、それを解決したのも、君たちなんでしょう?」
「あ、ああ……まあ、そうだが……」
「どうしてそんなことしってるのか、って感じね。実はね、わたし、狭霧さんと知り合いなのよ」

 狭霧、狭霧深影。確か、今はセキュリティ特別捜査課長になったのだったか。彼女と知り合いとは驚いた。

 俺がさんと話をしていると、何事だ、と奥からジャックがやってきた。ちなみに、クロウは仕事のために今、ここにはいない。
 ジャックはさんを見て怪訝そうに睨みつける。知らない女性が現れれば、彼も何事だと思うだろう。

「遊星、この女は……」
「ああ、君、ジャック・アトラスね! 元キング!」
「元キングだと?!」
「あ、ごめんね。狭霧さんからそれ言っちゃいけないって言われてたんだった……。ジャック・アトラスくん……遊星くんの幼なじみ、なんだったっけ? ってああ話してたら忘れそう。これ、うちのパン屋から!」

 そういって彼女が差し出したバスケットには、焼き立てのパンが詰まっていた。ふわっと広がる香りも食欲をそそる。

「まだ、パン屋で仕事を?」
「ええ、そっちでも仕事をしているの。メインはトップスでの仕事だけどね」
「トップスか。いい仕事は見つかったか?」
「ええ、とてもいい仕事よ。結構自由だし!」
「それはよかった。ああ、ジャック、この人はさん。俺が雑賀の隠れ家に住んでいたとき、近くのパン屋で仕事をしていた人だ。食事で世話になった」
「はじめまして、ジャックくん。あ、これうちの人気商品なの! 食べて食べてー!」
「ふん、毒など入っていないだろうな」
「失礼な!」

 さんはくすくすと笑いながら、ジャックにベーコンパイを渡す。確かにあのパイは美味しい。俺も気に入っている。

「……ふむ、といったか。お前、トップスで仕事をしているといったな?」
「ええ、そうだけど」

 何か?とでも言うような顔をしているさんの声を遮るように、ガレージの入り口が開いた。

「ゆーせー!」
「こら龍亞!ノックくらい…… あっ」
「えっ、ねーちゃん!」
「あれ、龍亞くん龍可ちゃん。遊星くんと知り合い?」
「ねーちゃんこそ!」
「おい、龍亞説明しろ!」

 キッ、とにらみを利かせるジャックに、龍亞が一瞬びくりとした。なにもそんな眼光で睨まなくとも分かることであろうに。

「今ね、ねーちゃんが俺たちの家にいるんだー!」
「新学期が始まってから、家事の手伝いをしてもらってるの。わたしたちだけじゃ、掃除とか、ちょっと困ることがあるから……」
「そうなの。わたしの今の仕事はこの子たちの家政婦さん」
「なるほど、そういうことか。だから結構自由だ、と言ったんだな」
「ええ。この子たちとおしゃべりしているのは楽しいし、本当にこれが仕事でいいのかなって思うくらいよ」
「あっ、それでそれで、なんで遊星とねーちゃんが知り合いなの?」
「ああ、以前雑賀の隠れ家に住んでいた頃、近くのパン屋でさんが仕事をしていたんだ。食事でよく世話になった」
「へえ、そうなんだ! てっきり俺はねーちゃんが遊星の恋人かなにかかと……」
「もう、龍亞! そういう勘違いばっかり!」

 ぷんすか、と起こる龍可に、苦笑する。恋人か、そんなこと考えたこともなかった。確かに彼女のことは気になるが、それが恋だの愛だのという感情かと聞かれると、違う、と思う。
 視線を上げるとばちり、とさんと視線が絡む。どうやら彼女もそう思われているとは思いもよらなかったようで、苦笑している。それをみた龍亞が声を荒げ、「あっ、二人して笑ってる! ますます怪しいよ!」と言われてしまった。

「龍亞くん、大人にはね、聞いちゃいけないこともあるのよ?」
「えっ、それって……!」
「おいおいさん、あまり龍亞をからかわないでくれ。本気にする」
「ごめんごめん。恋人だなんて関係じゃなくて、ただの友人よ。あ、焼き立てのパンあるわよ、食べる?」
「食べるー!」
「わたしも食べる!」

 二人の子どもが、さんの持ってきたバスケットに群がる。

「なあ、さん」
「ん、なあに、遊星くん」
「龍亞や龍可が良くここに来る。あんたも暇ならくるといい。あいつらと一緒でも、一人でも。もてなせるものは何も無くて悪いが、あんたとならデュエルの話をしているだけで楽しそうだから」
「ありがとう! 龍亞くん、龍可ちゃんが放課後だいたいどこにいるのかも分かって安心したわ。あの子たちが迷惑をかけるかもしれないけど、よろしくね、遊星くん」

-OZONE-
2012/03/19