傷痕

アクア団、マグマ団の企みからホウエンが救われて、何日が過ぎたことか。
日にちが過ぎるのは早い、と思う。

ルビーは鏡を見てふ、と溜息を零す。
普段帽子で隠れている黒髪、そして―――その傷。
この傷は、何年経っても消えない気がしてやまない。

10年、20年―――それだけの時が流れれば、消えるのだろうか。
そうも考えるが、『消したくない』と思うことがあるのだ。

それは、彼女に罪の意識を思い出させるためじゃない。
自分の無力さを忘れない為に、消したくないと思うのだ。
あの時、そう彼女と初めて出会ったあの時。彼女を守ろうとした。
でも、彼女を守れなかったんだ。

僕は強い。そう、自負していたからでもあるんだろう。
父さんが素晴らしいトレーナーであったこともある。少なくとも周りの子達よりは強かったから。
だから、僕はボーマンダと戦ったんだ。

しかし、それによってレックウザが目を覚まし、研究所を逃げてしまった。
そして、僕の父さんは僕を庇って、ずっと、レックウザを追い続けていた。

そして―――。

「…父さんは、レックウザを従えて来た…」

けれど、レックウザを支配下に置いた父さんは間も無く、倒れてしまった。
レジスチル、レジロック、レジアイスを支配下に置いたダイゴさんも、同じく。

そう、倒れてしまったんだ。
でも、彼らは生きている。

僕がジョウトで出会ったあのポケモンが、僕たちを助けてくれて。
僕にあの子の名前は判らなかった。
後で大師匠に聞いた話では時渡りポケモン、セレビィだったという。

「ルビー!!!」

声がして、帽子を被ろうと手を動かしたと同時に扉は開いた。
ちょっと文句を言いたい、これは不法侵入というんじゃないのか。

「あ…」

余りにも速い動作で開いた扉に驚いた僕は帽子すら、被れなかった。
そして、彼女は僕の頭にある傷痕を、見て言葉を失う。

彼女に罪の意識を芽生えさせるつもりはないのに、彼女の顔は曇る。

「―――…気にしないで」
「でも…」
「生きている限り傷は癒える。この傷は、僕自身の戒めでもあるから」

君に、あの時の辛い思い出を思い出させるつもりはないんだ。

「…ルビー…」
「それよりも、君は僕を呼びに来たんだろ? 何か用でもあったんじゃないのか?」
「そうったい! オダマキ博士が呼んでたったい!」
「そうか、じゃあ早く行かないと」

そう言って僕は帽子を被る。
僕自身の戒めの傷、それを、隠しながら。

2007/10/09

結構サファイアって罪意識強そうというか負の感情に弱いような気がする。
明るく振舞ってはいるけれど、というやつ。