Question and answer

「ヒョウタさん、お疲れ様です」

 君はトレーナーで、この町に滞在する理由はあまりないと思う。そう、僕は思ってる。トレーナーが町に滞在する理由を聞いたところで、僕に何があるわけでもないし、聞かないでいる。

 でも、最近ちょっと……ほんとうにちょっと、だけど、なぜ彼女がここに滞在しているのか、気になっている。
  トレーナーはポケモンを鍛えたり、ジムに挑戦したり、やることはたくさん有るはずなんだ。なのに、彼女はいつもこの町にいる。

 彼女のポケモンたちがとても強いのは知っている。もう鍛える必要なんてないんじゃないかってくらいに強いんだ。四天王クラスだということも、知っているつもりだ。
 事実として彼女は、ホウエンでチャンピオンになり、このシンオウでもチャンピオンのシロナさんを倒したことがあるのだから。正直、はっきり言ってしまうと、彼女のポケモンたちは僕たちの本気よりも、強い気がする。

 もしかしたら、何もやることがなくなってしまったのかもしれない、と一瞬ばかり思ったこともある。

「ねえ、ヒカリちゃん」
「はい、なんですか?」
「どうして君は……」

 君は、この町にいるの? そう聞こうと思って開いた口からは、言葉が出なかった。喉に、言葉が引っ掛かっている。言おうと言えば言えるはずなのに、僕はその言葉を言えなかった。どうしてだろう? そんな言葉くらい、なんてこともないはずなのに。

 聞いちゃいけない? 僕はどこか心の中でそう思っているのだろうか。聞いちゃいけないような話題でもないはずなのに…。

 どうして、だろうか。

「ヒョウタさん」
「……あ、ああ、なんだい?」
「ヒョウタさん、気になりますよね。私がどうしてこの町にずっといるのか」

 聞こうとしていたことを、言われてしまった。どうして君はそんなに鋭いんだろう。

「それは、内緒です」
「ええっ!?」

 思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。答えてくれるとばかり思っていたからだ。
 気になることをじらされると、なんだか胃がむかむかしてくる気がする。

「うそ」

 僕の反応が予想以上の反応だったのだろうか。彼女は僕を見て、声を上げて笑いながら、短く一言紡いだ。その言葉が耳を通って、脳に届いたのがとても遅く感じられた。

「少しでも、ヒョウタさんと一緒にいたいから。だから、私はクロガネにいるんです」

 言葉をくみ取る前に、彼女に抱きつかれて、慌てて彼女を支えて、その場に踏みとどまって。何が起きたのか理解するのにとても時間がかかった。

「ヒカリちゃん、いま、なんて……?」

 僕の中を満たしたその言葉が、嘘のような気がして。もう一度僕に聞かせてと、僕は聞き返した。

「ヒョウタさんと一緒にいたい」

 もう一度、彼女の口から言葉が聞こえて、僕は何も言えずに、彼女を抱きしめた。

2009/01/07
2015/05/23加筆修正