ブルーライト

「……、こんなふうに外に出て、海を眺めて、月を眺めて、空気を感じて、ただただぼうっとしていられる日が来るなんて、考えたこともなかった。これもすべて、君のおかげだね、アティ」
「……あ、バレちゃってましたか……ははは」
「諜報部とはいえ、僕だって軍人だったんだからね。……君、気配を消そうともしていなかっただろ」
「今はそうする必要もありませんからね」

 イスラが力を使い果たし、記憶を失って目覚めてから、何年経ったかは、はっきりと覚えていません。
 この島の時の流れは、外とかなり違うとメイメイさんに聞きましたし……。

 イスラは、急に、以前の記憶がフラッシュバックしてきたんだそうです。思い出してくれたことに、みんなとても喜びました。子供たちも、軍を辞めて島に残ったアズリアも。

 アズリアは、イスラの記憶が戻ってから、軍に復帰しました。
 一度は逃げた身だ、復帰できるかどうかわからない、なんて言っていたのですが、レヴィノス家の今までの功績のおかげもあり復帰できたそうです。
 ただ、それまでと同じように軍隊を任せられることはなく、下々の兵と同じように、一からのスタートになったそうです。
 今はギャレオさんと共に、聖王都との国境付近の警備をしている、とこの間カイルさんに持ってきてもらった手紙に書いてありました。
 戻るからには、当初の目標であった上級軍人を目指すと意気込んでいましたし、彼女の能力は衰えていませんから、あっという間にまた隊長になっていると思います。

 そして私は、この島でみんなの先生として今も、過ごしています。

「……本当に」
「……本当に、なんです?」
「君は、すごいと思っていたんだよ。僕と逆のことをして、全てこなして、憎たらしくてたまらなかったね。どうして君なんかが、って思ったんだよ、あの時は」
「でも、私もイスラも、ただみんなを傷つけたくないから……考えていることは同じだったんですよね。なんとなく、イスラがやっていることがどうもおかしいなとは思っていたんですよ」
「……、あの時は、それに気づかないまま僕を殺して欲しかったよ。そのためだけに、僕はこの島で紅の暴君を振るったのだから」

 でも、今は違いますよね。病魔の呪いからも解放されて、記憶も戻って、本当に自由になって。本当に良かったって思ってるんです。
 あの時は、イスラにみんなで幸せになる方法を探すなんて言ったけれど、今がとても幸せだなあって思うんです。

 争いもなく、集落間の交流もあって、みんなが笑顔で。この島を、私は守り続けていきたいんです。

「ねえ、アティ。気になっていたことがあるんだけど」
「はい、なんですか?」
「君に関わる人はみんな、どこからその力が出てくるのかってくらい吹き返すよね。君の笑顔を守りたいから、笑顔を見たいから、そう言ってさ」
「あははは、そうみたいです」
「そうみたいです、って君ねえ……」

 はあ、とイスラがため息を吐き出したのがわかりました。呆れられちゃいましたね。

「まあ、それもいいかな」
「……え?」
「……僕にはもう、魔剣を扱う力はないから、帝国の下っ端より弱くなってしまっているかもしれない。召喚術の強い力を持っているわけでもないし、ね。でも、僕も……君が守りたいと思ったものを、守ってあげるよ。君はどこか抜けてるからね、誰かが君のことを見ていないと」
「……ふふ、ありがとう、イスラ」

 本当に、ありがとう。

2013/01/02
イスラED+アズリアEDな感じで夜会話っぽく
BGM:Catharina(同人音楽)