泡沫

 あの方も、気付いて居るのかも知れん。

「……あら、セイロンじゃない。私のお店に来るなんて珍しい」
「シャオメイ殿は随分と楽しそうであられるが」
「まぁ、楽しいのは事実だしねぇ。にゃはははは♪」
「居心地が良いのには、我も納得いたしますがな」
「もうシルターンに戻ろうと思わないでしょう? 特に、アナタは」
「何故、そうお思いで?」
「わかりやすいのよ、みんな。あの、グラッドって言ったかしら? あの子が憧れてるアズリアも、前に来たスバルも、パナシェも」
「そのご様子ですと、既にお知り合いであったか」
「そうね。アズリアやスバルたちは私が関わった最も古い時代のヒトと言ってもいいかもしれないわねぇ」

 そう言って、シャオメイ殿はまた酒の瓶を開けた。本当、どう生活すればこうなるのやら。

「あぁ、そろそろお昼ご飯の仕度をする頃じゃないかしら」
「……そのようなこともわかるのか」
「そりゃぁ、フェアちゃんから聞いてたしねぇ?」
「まったく、貴殿には敵わんな」
「まぁ、また何か会ったら来なさいな。相談ぐらいならいつでも乗って差し上げるわよ」
「あぁ、そのときには是非宜しく頼むとしよう」

○ ○ ○

「セイロン! 何処行ってたのよ!」
「そんなに腹を立てるでない、店主よ」
「怒ってないけど」
「はて、心なしか声音が低いのは我の気のせいか?」
「気のせいです」

 あの方は気付いている。我がシルターンに帰りたくないと思う理由を。
 それがもし、泡沫の思いであったとしたならば、あの方はあんなことは言わぬだろう。

「セイローン! そっちの荷物運ぶの手伝って!」
「あぁ、心得た」

『帰らなくたって、バチは当たんないわよ。手放したくないものがあるんでしょう? ならとことん、守ってやりなさいな』

2006/12/20,2012/09/22修正